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橋下徹「痴事」の朝礼について
橋下ウォッチャーの私としては、一応、この話題は記録しておかねばなるまい。まともにまとめる暇がないので以下は断片的なメモになる。
産経新聞。 橋下知事が若手職員を対象に初の朝礼 女性職員が知事に反論 突っ込みどころはいろいろあるが、以下の点についてコメントしたい。 さらに、橋下知事は「始業前に朝礼をしたかったが、超過勤務になるのでできなかった。たかだか15分の朝礼ができないというなら、勤務時間中のたばこや私語も一切認めない」と発言。 ◆まず確認すべきは、サービス残業は違法行為である。それに対して「感謝する」と言う発想自体が間違っている。どこまでもずれた人間だ。ここでもルール無視なんだな。 (サービス残業をしていると言われたら、そのようなことはしないで済むようにどのようにお互い協力できることがあるだろうか、と考えるのが普通である。それに対して、2ちゃんねる系の書き込みでは「サービス残業は能力がないから」という意見もある。私もそれは否定しない。確かに、非常に能力がある人間ならそういうことにはならないことが多い。しかし、組織として恒常的にサービス残業があるとすれば、単に能力の問題ではなく、「運用の仕方の問題」と「仕事量と人数のアンバランスの問題」の少なくともいずれかがあると考えなければならない。能力などという目に見えず、実証することも大抵はできないものが原因だとしている時点で、その理論(理屈)は現実に対して敗北している。物事を改善する力がない「ヘボ理論」である。むしろ、そのようなこと(サービス残業は能力の問題)のように言うならば、そのように言っている人こそ「能力がない」可能性を疑ったほうがいい。まともに解決可能性のある理論を考えられないのだから。逆に言えば、解決可能性のあることを提言できるなら、「サービス残業するは無能だから」と言ったとしてもいいだろう。事実の一面を捉えている場合があるから。 また、同じく2ちゃんねる系の書き込みでは「公務員なんてヒマなのに」という書き込みもあったが、それも端的に言えば間違いである。それは「製造業は忙しい」とか「サービス業はヒマだ」などと言うに等しい。公務員といっても同じ仕事をしているわけではなく、実際にはやっていることはかなり違うからである。例えば、一般事務職と現業とは違いが大きいのは誰でもすぐに分かることだ。だから、恒常的にサービス残業がある部署とそうでないところがあると言うのが実態だろう。例えば、県庁や市役所の建物の前を、夜9時とか10時頃通ってみれば、毎回同じ部屋に明かりがついている傾向を見て取れるはずである。逆に言えば、いつも電気が消えているところもあるはずであるが。) 「始業前に朝礼をしたかったが、超過勤務になるのでできなかった」というのは、当然だろう。まず、法的に見てそうならざるをえない。橋下は、公務員が率先して違法行為をしろとでも言うのか?世の中には「朝礼くらいいいじゃないか」という発想をする人間は確かにいるだろう。気持としてはわからないこともないが、朝礼に出席することが命令による義務なのだとすれば、それを認めた場合、どこまでも歯止めのないサービス残業を容認することに繋がる。 実際にそれを認めて、それが定着すれば、「朝礼が15分の予定だったものが5分で終わったので、始業時刻前から仕事をするのが当たり前だ」ということになる。「朝礼の時間を30分にする」ということだってできる。その上で、上記の例と組み合わせれば、25分のサービス残業を「なんとなく」「流れで」強制できることになる。その流れができた場合、使用者に有利な変更は次々とできるようになるが、労働者に有利な変更はまずおきない。そうしたことがおきないように弱い立場にある労働者を保護するのが、労働法制の意義だろう。 ここでも前回指摘したように、橋下がルール違反を何とも思っていないことが露呈する。(こういうのを「キ●ガイに刃物」というのだろうな。) ◆それから、「たかだか15分の朝礼ができないというなら、勤務時間中のたばこや私語も一切認めない」と言っている部分について2点ほど。 一つは組織論では、私語を含めたインフォーマルなコミュニケーションの重要性を説いている。むしろそうしたところでこそ重要な情報がある程度の速さで組織内に伝達されたり、新しいアイディアが生まれたりする。公務員に特別なアイディアは必要ないと思うかも知れないが、公務員の仕事のすべてがルーティンワークであるわけでもない。同じ事務処理をするにしても、短時間で少ない労力でできるようにするということも、アイディア次第という部分がある。そうしたアイディアが出やすいのは、何の私語もないような堅苦しい場ではない。 もっと重要なのは、橋下が懲罰主義者(→私の命名)であるということだ。他人を罰することによって強制しようとするのだ。これは以前、東国原知事が「徴兵制」発言をしたときに、私が批判したのと同じパターンである。力による支配によってあらゆることを解決しようとする発想である。 私に言わせると、この発想に頼る人間というのは一般に、頭が悪い。正真正銘に頭が悪い。なぜか?こういう人は、知恵を使って物事を解決しようとしないからである。知恵を使うために、背景となる事実をよく分析しないからである。正確に言うと、いろいろと考えるべきところで頭が働かないので、短絡的に力で押さえつけることで問題を解決しようという発想になるのである。よく考え、分析することよって、解決しようとする問題の根本的な原因を取り除くという発想がないのだ。こうした「回りくどい事」をするのは特別な能力ではない。特別の努力なしに、自然にできることである。これができるのは「頭が普通に働いている」ということなのである。頭が普通に働いていないということを、私は「頭が悪い」呼ぶ。 一般に、ネオコンと呼ばれる連中や、これとは重ならないが靖国派と呼ばれたり、国家主義者と私が呼ぶ連中は、こうした「力の論理」でしかものを考えられない。これは彼らの思考の特徴である。その意味は、要するに彼らは馬鹿だということだ。そのもっとも分かりやすい具体例は安倍晋三だろう。 ◆さて、次。 女性職員(24)は「知事の意気込みはすごく伝わってきた。だが、私たちにどういうことをしてほしいのかもっと話してほしかった」と残念そうだった。 橋下は何も知らないから具体的なことなんて言おうと思っても言えるわけない。この職員も分かっていて皮肉で言っているのか?そうでないなら、もう少し人を見る目を養ったほうがいい。 次は毎日新聞の記事。 橋下知事:若手職員集めた初朝礼で激論 ◆「現場のことを何も知らない知事が、朝礼が9時15分で甘いとかをテレビの前で言うやり方は、府の労働者と府民をバラバラにしていくと思う」というのは、確かにそうだろう。 (なお、産経の記事は女性職員の発言の意味が毎日新聞とは違っているが、私がテレビのインタビューをちらっと見て、女性職員の主張を聞いた限りでは、産経の要約の仕方は間違っていると思う。私が聞いていないところで語っているのかもしれないが、主として問題にしているのは府民と府職員との分断であると思われる。府職員同士の分断はどちらかというと二次的である。) なぜならば、「15分の時間外で騒ぐ生意気で怠惰な公務員」というイメージを知事がメディアを通して作っていくことになるからだ。これに対して、府の職員にはそうした発信のチャンスが与えられない。しかも、こうしたことの積み重ねの結果、府民からの信用が失われれば、それを取り戻すチャンスもほとんどない。地道な活動の積み重ねしかないのに、それは基本的には伝わるものではない(目に見えにくいものでしかない)からだ。 実際に、上記のようにして公務員や官僚のイメージが作られてきたのが90年代以降の一貫した流れである。(右も左も、リベラルだろうとそうでなかろうと、立場を問わず、この洗脳ははっきりと功を奏している。見事に嵌められているというほかない。) ついでに言えば、それに拍車をかける「元官僚」が多いのも問題だと思っている。その点にかけては私は天木直人に対しても否定的な評価を下す。辞めた人間は基本的に組織から認められなかった人であることが多いから、組織や官僚を憎んだり妬んだりする傾向があり、そうしたバイアスがかかった情報ばかりが世に垂れ流されることになる。それとは逆に、まじめにやっている人間もいるのに、それは知られることはない。 私の個人的な見解をいえば――ある程度の理論的な裏付けはあるのだが――民間でも「本当に役立つ人間」というのは2割くらいだろう。6割くらいは「普通」でしかなく、残りの1~2割は「使えない」ヤツだ。公務員でもその割合は基本的に変わらないと思う。そうだとすれば、2割のダメな奴を探すのは何の苦労もないってことである。組織を憎んでいる人間がそれをピックアップして悪く書くことには、何の特別な洞察力も必要ないのだ。
by zarathustra1883
| 2008-03-17 02:46
| 政治ニュース
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